<第17話> 暗記カードゲーム シャカルタ・リカルタ

「シャカルタの講義はこれまで、われらがマリッペこと波木真理子先生が担当してきましたが、今回は私、大学生の後藤千代子が担当しますのでよろしくお願いします。

シャカルタは、学校の試験勉強としても使えるカルタ遊び、カードゲームです。
このゲームは、私と友達が百人一首カルタクラブに所属していた高校生の頃に、一緒に暗記カードを使ったカルタ遊びができないかと考えたことがきっかけとなって生れました。
そして真理子先生や教材クラブの人たちからアドバイスをもらって完成させたものです。
ゲームの名前については、大きく分けて、文科系の科目のカルタをシャカルタ、理科系の科目のカルタをリカルタと呼んでいます。

真理子先生がいつも強調されることですが、大切なことは、シャカルタ・リカルタの精神です。
それは勉強より、スポーツや武道に似ています。
それはフェアプレーを重視します。
そしてライバルである友達の成績を上げさせようとしているうちに、結果として自分の成績も上がっていくという考え方を大切にします。

これとは逆の考え方だと、たとえばこんなことが起こります。

明日は社会科のテスト。試験範囲は教科書30ページ分もあります。
A君とB君は、明日のテストで絶対に相手に勝ちたいと思っていました。
それで、「明日のテストの勉強なんかしないよ」とお互いに言いました。相手を油断させるためです。

学校が終わってからもずっと遊んでばかり。
家に帰ってからも、相手に勉強させないために電話をかけてオシャベリばかり。
夜も遅くなってようやく…
「もう疲れた。そろそろ寝るか」
「オレも寝る。おやすみ」
そう言って二人は電話を切った後、急いで猛勉強を始めました。
そして深夜まで勉強して翌朝はフラフラ。
結局お互いの足を引っ張り合った二人は、テストで期待通りの成績を取ることはできませんでした。

シャカルタの精神でやると、試験範囲を友達と分担できます。

やり方をご説明しましょう。
テスト範囲30ページを友達3人で10ページずつ分担することにしました。
自分の担当の10ページは友達の分までしっかり勉強して、シャカルタを50組ずつ作ることにしたのです。

1組のシャカルタは、2枚のカードからできています。

シャカルタの作り方は簡単です。
2枚の白紙のカードを用意して、「答え」を書きます。2枚とも同じように書きます。
そして、「答え」であることを示すための印を付けます。赤いマーカーでも、印鑑でもOKです。

2枚のうち1枚の裏側に「問題」を書きます。
もう1枚は白紙のままです。

リカルタで、花や星座の絵などを印刷して「答え」とする場合があります。子供用に恐竜や乗り物の絵などを「答え」とする場合もあります。そのときは、答えの部分が明らかなので、印は特に付けません。
いずれにしても2枚を作り、そのうち1枚の裏に「問題」を書き、もう1枚の裏は白紙のままです。

裏に「問題」が書かれている方を、「読み札(よみふだ)」と呼びます。
裏が白紙の方を、「取り札(とりふだ)」と呼びます。

いま私の手元には、50組のシャカルタがあります。

左手には「読み札」50枚、右手には「取り札」50枚を持っています。

シャカルタの対戦方法をご説明しましょう。

相手と向かい合って座り、シャカルタを交換します。

相手のシャカルタを受け取ったら、まず「読み札」を「答え」が見えるように並べ、その下に「取り札」を「答え」が見えるように並べます。


上下の組が一致していることを確かめたら、読み札を裏返して「問題」が見えるようにします。

相手が作ったシャカルタの問題と答えを見比べながら、しっかり記憶していきます。

このとき、交互に相手に質問する時間が与えられます。
相手からどのような質問が来ても答えられるように、自分が担当する範囲についてはしっかり勉強しておきます。
シャカルタの出典となった教科書や参考書は自分の脇に置いて、フセンを付けておくとよいでしょう。
本を見ながらでもいいので、友達からの質問には正確に答えてあげましょう。

こうして、各自50組のシャカルタを作って総当たり戦を行えば、3名で150の項目について学習できることになります。

お互いの質問が終わったら、「読み札」を重ねて、「読み手」となる人に渡します。

自分の前に並んでいるのは、相手が作った「取り札」です。

相手の前に並んでいるのは、自分が作った「取り札」です。
その時点で、どの札がどの位置にあるか、しっかり確認しておきます。
二人が作った「読み札」は、読み手が重ねて持ち、トランプのようによく切って並べ替えます。

あとはカルタの要領で、読み手が「問題」と「答え」を順に読んでいきます。
「取り札」を多く取った人が勝ちです。

「問題」の読み方ですが、シャカルタ・リカルタの「問題」は、1つの文章であるとは限りません。
その「答え」を示す文章が、2つや3つある場合もあります。
その場合は、読み手は自分の判断で、読む順番を並べ替えて読んでもよいとすることもできます。

この4枚の「取り札」が残っているとしましょう。
読み手が 「イタリア…」と読み始めたら、ニュートン以外のガリレオ・ガリレイなど3枚が該当することになります。
読む順番を変えて、「最後の…」と読み始めたら、ミケランジェロとレオナルド・ダ・ビンチの2枚が該当します。
相手のお手付きを誘う書き方ですが、これは択一式テストで失敗しないための訓練にもなるでしょう。
このように「問題」の書き方をいろいろと工夫すると、ゲームでも、そして実際のテストでも効果的だと思います。

シャカルタ・リカルタはこのように、友達とぶつかり稽古をする中で、お互いに強くなっていくための教材です。
だからフェアプレーが重視されます。相手に間違ったことを憶えさせるためにウソのシャカルタを作るような行為は、フェアプレーとは言えません。
しかし、「お前が作ったシャカルタを信用したために、テストで失敗した」という責任転嫁もシャカルタの精神に反します。
シャカルタを終えて、友達が担当した範囲への理解が深まったら、その範囲の教科書の部分を必ず自分で確認して、記憶を定着させてください。
仕上げは友達の力を借りず、自分でやりましょう。きっと短時間でできると思います。




次にシャカルタ・リカルタを使ったカードゲーム、「シャカード」「リカード」についてご説明しましょう。

シャカード・リカードについても、最初に相手のカードの「問題」と「答え」を並べて、記憶と質問の時間を設けることとします。
それを終えたあと、各種ゲームの対戦をはじめます。

■シャカード・リカード 「ババ抜き」

50組のシャカルタを用意して、それとは別に、表に「ジョーカー」と書き、裏が白紙のカードを用意して混ぜておきます。

裏側は白紙か、「問題」になっています。
それを上にしてすべてのシャカルタを重ね、トランプのようによく切って人数分に分けます。

あとは「ババ抜き」と同じ要領でゲームを進めます。
自分のカードの「答え」を見て、一致しているカードは合わせて前に出していきます。
残ったカードを友達から取ってもらい、別の友達からカードをもらって、一致したらカードを前に出し、早くカードがなくなった人が勝ち、最後に「ジョーカー」を持っていた人が負けです。

トランプと違うのは、自分が持っているカードの裏面は、「問題」が書いてあるものと白紙のものがあり、相手は「問題」を見て、反対側に書いてある「答え」を判断できるということです。




■ シャカード・リカード 「スピード」

シャカルタは読み手が必要ですが、シャカードにすると、トランプのように二人で対戦できます。
まずシャカルタを「読み札」と「取り札」に分けます。
「読み札」については、「問題」が見えるようにして並べ、位置を憶えておきます。
「取り札」については、白紙を上にして重ね、トランプのようによく切って二人で分けます。

ゲームが始まると、まず手に持った「取り札」を、その答えと一致する「問題」の上に置きます。
そして「問題」のカードを裏返し、答えが一致したら、2枚とも自分の右側に置きます。

答えが一致しなかったら、相手の左側に置きます。

二人とも全問正解の場合、前に置いてある「読み札」は全てなくなってしまいます。その場合は、早く手に持った「取り札」がなくなった人が勝ちです。

相手が間違ったカードが、自分の左側に置かれています。
この左側のカードは、その組となるカードを獲得する権限を示します。
その組となるカードは、前に残っているか、相手が手に持っているか、自分の手に残っているかのいずれかです。その組となるカードが見つかったら、合わせて自分の右に置きます。
こうして全てのカードがそれぞれの右側に置かれたら、枚数を数えます。
「取り札」を手放すスピードで負けても、獲得枚数が多かったら逆転勝ちとします。


その他の楽しみ方について、新しいアイデアを思いついた人は教材クラブまでお知らせください。


それでは、これからシャカルタ・リカルタの準々決勝を行います。
予選会を勝ち抜いたのは、高校生5名と、中学生3名です。
シャカルタは6名、リカルタは2名ですが、今回は部門毎に分けません。
この試合は今年の王者決定戦ですので、優勝者は全体で一人とします。

試合進行は、百人一首カルタクラブの頃の私の友達で、大学生の前田が行います」


講義の後半は、予選会を勝ち抜いた8名の準々決勝から決勝までが行われ、今年の王者が決定した。
健一とタケシも「読み手」として参加した。

<第17話 終>